タイ国際航空が同国破産法に基づく破産申請を開始。同時に会社更生の手続きについて、事実上のオーナーであるタイ国政府が承認したと、正式に発表があったのが、2020年5月19日のことでした。
会社更生手続きですから、フライトなど通常の運航は継続しつつ、不採算部門のリストラなどで会社再建を目指してきたわけですが・・。
2020年2月に入り、ついにその再建計画の一端が明らかになりました。
タイ国際航空といえば特にファーストクラス、ビジネスクラスなど上級クラスでの超絶マンパワーを掛けたVIPサービスがとにかく凄いんですが・・・、一方で個人的には「こんなサービス・・多分長続きはしないな・・」と予想していたんです。
そして、明らかになった再建計画では、予想通り(笑)ファーストクラスの全廃の見込みが明らかになっています。
ただ、新型コロナ禍により想定よりもその破綻が早まっただけで、これは来るべきして来た現実・・といって良いのかもしれません。
今後、ファーストクラス廃止や航空会社のLCC化などがさらに加速するのか?そして、陸マイラーとして取るべき道は?考察してみたいと思います。
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タイ国際航空の「レガシー」サービス

タイ国際航空は、俗に言う「レガシーキャリア」の中でも、まさにザ・レガシーキャリアと言ってもよい、フルサービスの航空会社でした。
例えば、本拠地バンコク・スワンナプーム国際空港のファーストクラス、ビジネスクラス搭乗者向けラウンジサービス・・これはもう本当に伝説・遺産(レガシー)と言っても良いサービスなんですよね。
・・でした、というべきかもしれませんが。
特にファーストクラスが滅茶苦茶凄くて、チェックインから、とにかく何もする必要が無いんです。
座っているだけで何人もの方が至れり尽くせりでチェックインの全てが終了するロイヤルファースト・チェックイン。その後、フルアテンドで出国審査へご案内され、その出国審査はなんとロイヤル・ファースト専用でノーストレス。
その後、地上係員のフルアテンドで専用のリムジンカー(通称「ピロピロ」)でラウンジへご案内。
ロイヤルファースト・ラウンジでは個室に案内され、高級料理&シャンパンが食べ放題飲み放題。そしてまさかのトイレが男性用でも個室で、使うたびごとに専属の係の方が清掃していただけます。
さらに、専用のロイヤルオーキッド・スパで本場のタイ・マッサージがこれまた1時間30分も楽しめ、最後にさらには優先搭乗ならぬ、ほかの乗客が全員搭乗してからの「逆優先搭乗」。もちろん係員のフルアテンドです。
はっきり言って、こんな「ザ・ファーストクラス」な王侯貴族体験ができたのはタイ国際航空の本拠地、スワンナプーム国際空港だけです。
正直、地上サービスだけで私1人のためにいったい何人の係の人がいるの?多分20~30人はいるよね?って言うくらいの超絶トンでもないマンパワーサービスだったんです。
そのくせ、搭乗したA380ファーストクラスの搭乗者は2人でした。つまり、明らかなオーバースペックのサービスなんですよ。嬉しいんですけど。
もちろん、このラウンジサービスが破綻の元凶であるというつもりはありませんが、タイ国際航空がこれで利益を上げているならともかく、万年赤字の会社だったんですよね。
万年赤字にも関わらず、明らかに利益に貢献していなさそうなこのフルスペックのラウンジサービスを維持し続けてきた・・、つまり改革ができなかったってのが、最終的な破綻の原因の一つなのは確かだと思います。
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ファーストクラスは廃止の方向

そして・・ついに発表されてしまいましたね。
タイ国際航空のファーストクラスは、ついに「全廃」の見込みです。
タイ国際航空、エアバスA380型機など保有機の約半分を売却 ファーストクラス全廃か https://t.co/JJ0pLS527W pic.twitter.com/0NFSwruCYh
— TRAICY(トライシー) (@traicycom) February 12, 2021
こちらのTRAICYさんの記事によると、タイ現地紙が報じた、タイ航空の再建計画の内容が以下のとおり。
- 経年機を中心に、機体の半数を売却
- エアバスA380型機、エアバスA330-300型機、ボーイング747型機は全機退役の方針
- 機体数の減少に併せ、395人のパイロットを解雇
特に衝撃的なのが、エアバスA380と、ボーイング747の全機退役でしょう。
タイ国際航空のファーストクラスはA380とB747に設定されているので、この方針で進めばタイ国際航空のファーストラスは全廃となる見込みです。
ただ、これは正直予想されたこと・・ですからね。
このコロナ禍の直撃を航空会社が受ける前から、特にファーストクラスなど「不採算」のサービスは、廃止の動きが加速していました。
例えば大韓航空は2019年6月から、もともと49路線で設定していたファーストクラスを、一気に半分以下となる27路線で廃止し、22路線としました。
また、アシアナ航空・・これまた業績不振のため売却された航空会社ですが、同時期にA380のファーストクラスを廃止しました。そして、この理由が非常に興味深いんですよね。
「結局、ファーストクラスの乗客のほとんどがマイルで搭乗する顧客で、しかも搭乗率は20~30%で非効率だから」というのが、その廃止の理由なんです。
正直、私自身もマイルでしかファーストクラスに乗ったことは無いですし、乗れないので、まさに「その通りでございます!」って感じですね。
そして、さらに面白いのが「マイルでファーストクラスに乗るのは、自社優良顧客の「夢」なのにそれを遮断するのはひどい!」という指摘に対し、アシアナ航空は「プレミアムサービスは今後収益性のみで運営する」との見解を示しているんです。
収益性のみで運営・・それ完全にLCCやん!って感じですよね。
なお、タイ国際航空もA380やB747を退役させた後は、エアバスA350-900、B787-8、B787-9、B777-300ERに集約し、運航コストを抑えていく見通しになっていますので・・。
タイ国際航空も、収益性を重視したまさにLCC的な運用に移行するものと思われます。
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コロナでA380は軒並み退役へ

そして、この元々あった「不採算サービス・不採算機材からの撤退」の流れは、航空業界を直撃したコロナ禍を受け、さらに加速しています。
例えば、世界最大となる110機以上のエアバスA380を保有するエミレーツ航空は、そのA380の4割、40機あまりを早期に退役させる検討を始めたことが報じられています。
エミレーツ航空が、エアバスA380型機46機の退役のほか、従業員のうち約30%を解雇することを検討していることがわかった。ブルームバーグなどが伝えたもので、エミレーツ航空は同紙などへのコメントを拒否した。
エミレーツ航空は、エアバスA380型機の最大の運航会社で、115機を保有。保有数の40%強にあたる。引退させていく方針はすでに発表されていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要の減少が長期間続くことを見込み、大幅に加速させる。
ティム・クラーク会長は、中東の現地紙The Nationalのインタビューで、今後数年間は航空旅行の需要は抑制されるとして、「我々は(エアバス)A380型機や、ボーイング747型機が終わっていることを認識している」と発言し、新型コロナウイルス感染拡大後、数年間の世界的な需要に適合しているのは、ボーイング787型機やエアバスA350型機であるという見通しを示した。
※2020.5.18traicyの記事より引用
エミレーツのA380といえば、超絶VIPサービスが受けられるファーストクラスなどで有名でした。なんと飛行機にベッドがあり、さらにシャワーまであるんですよ?
そして、そのサービスを支えていたのが、A380のバカでかい機体だったんです。
そのA380は「終わった」。つまり、エミレーツも収益性を重視し、ビジネスクラスを中心とした身の丈に合ったサービスに順次縮小していく・・ということを明確にしつつあります。
また、ルフトハンザもA380を6機、早期に退役させることを検討していることが、2020年4月に報じられています。(※記事はこちら)
また、A380の製造国であるフランスのエアフランスは、2020年6月に全機退役しました。
A380を中心とした「豪華絢爛な空の旅!」は、コロナ前からその採算性の観点から存続が危ぶまれていましたが、コロナの直撃を受け、その終焉が一気に現実のものになった・・と言えそうです。
そして、興味深いのが、エミレーツ、ルフトハンザ共に「世界的な旅行規制が完全に解除されるまでに数ヶ月、世界的な航空旅行需要が以前のレベルに戻るまでに数年かかることを想定している」ということです。
その間、ファーストクラスのような不採算サービスを維持し続けることや、タイ国際航空の地上ラウンジサービスのような超絶マンパワーサービスを維持し続けるのは絶対に不可能でしょうから、今後航空業界のLCC化の流れが・・残念ながらますます加速するのかもしれませんね。
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ボーナスタイムの終焉は近い?

新型コロナ禍の前から表面化がはじまっていた、ファーストクラスなど上級クラスの「採算性」に係る問題が、このタイ国際航空の破綻に見られるように、コロナで一気に加速している・・というのが私の受ける印象です。
これは昨日今日の課題ではなく、航空業界が潜在的に抱えていた課題なんですよね。
それがコロナ禍で一気に加速したんです。
タイ国際航空の破綻により、タイ国際航空の「あの」超絶サービスは無くなってしまうかもしれませんし・・もしかして残るかもしれませんが、「コロナ前」と全く同じというわけにはいかないでしょう。
個人的には、「そうなる前に」と思ってタイ国際航空のA380ファーストクラスに早めに狙って搭乗したんですが、これ、本当にラッキーでした。
そして、国内キャリアはどうでしょうか。
ANA、JALはファーストクラスのユーザーを一定数抱えているのですぐに「ファーストクラス廃止」ってことにはならないと思いますが、今後ファーストクラス設定路線数や座席数の減少、マイルを使った特典航空券の発券停止もしくは所要マイルの増額ということも、十分想定されます。
つまり、今の・・あえて言えば今なら簡単に貯められる10万~20万マイルで、まともに購入すると数百万円もするファーストクラスに乗れるのは、後の世からすると「ボーナスタイム」なのかもしれないんです。
ファーストクラスが廃止になるかもしれませんし、LCC化が加速するかもしれません。ぶっちゃけ、何が起きても不思議ではないので、マイルを持っている方は、もちろんコロナ後ですが・・ファーストクラスなど上級クラスには早めに「思い出作り」で乗っておいた方が良いかもしれませんよ。
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