台湾の中華航空(チャイナエアライン)が、2018年6月1日をもって、一部エコノミークラスに設定していたカウチシート「ファミリーカウチ」の販売を終了(廃止)したことを発表しました。
このチャイナエアラインのファミリーカウチシートへの投資は、グッドデザイン賞の受賞や、アメリカの旅行雑誌「グローバルトラベラー・マガジン」による「ベストエアライン・ノースアジア」の受賞にもつながった、チャイナエアラインの意欲的な投資だったと思うのですが、なぜ、このタイミングで販売を終了してしまったのでしょうか。
そして、ANAが2019年春からハワイ路線に投入するA380にも、カウチシートの設定が予定されています。このANAのカウチシートも、同じような運命(=いずれ廃止)を辿ってしまうのか?
カウチシートの今後について、予想を含めて考えてみたいと思います。
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中華航空がファミリーカウチを販売開始から約3年半で販売中止

台湾の航空会社「チャイナエアライン」(中華航空)が、B777とA350の両大型キャリアに、エコノミークラスでも3席まとめてフルフラットになる「ファミリーカウチ」シートを設定したのは、2014年12月のことです。
それから、たったの約3年半。2018年6月1日をもって、このファミリーカウチの販売を中止したとの公式発表がチャイナエアラインから出されました。

公式発表は上記のとおりですが・・・完全に英語なので、私なりに簡単に英訳すると下記のようになります。
2018年6月1日より、ファミリーカウチサービスは販売を中止します。
6月1日以前にファミリーカウチを予約し購入したお客様は、通常どおり利用できます。ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。
この発表のポイントは・・販売は中止するけれども、6月1日以前に購入した顧客は、通常どおりファミリーカウチサービスを利用できるということです。
つまり、シート自体はそのまま残っているんだけれども、新規のサービス提供は廃止するということなんですよね。でも、サービス提供開始から約3年半ですので、シート自体の耐用年数はまだまだ残っているはずです。
つまり、機材の老朽化等により、座席をリニューアルするからファミリーカウチを廃止する、というわけではないんですよね。
「ファミリーカウチ」は、ABC、HJK列でシート前面に折りたたみ式の部分を広げると、大人2人が横になって過ごすことができるもので、777-300ERとA350に搭載されているシートです。
777-300ERでのインテリアは、日本では2015年度に「グッドデザイン賞」を受賞しているほか、アメリカの旅行雑誌による読者投票で、2016年に受賞した「エアライン・オブ・ザ・イヤー」の「ベスト・エアライン・イン・ノースアジア」に選定された際も、「ファミリーカウチ」への投資が評価されています。
※FlyTeamの記事を引用しました。
このファミリーカウチの設定は、フライチームの記事のとおり、グッドデザイン賞の受賞など、エアラインとしての評価を高めるうえでも前向きな投資だったわけですが、まだ座席として利用できるにも関わらず、何故新規受付を停止してしまったのか?
ここからは、特にプレスリリース等から参照したわけではありませんが、何故このような結果に至ってしまったのか、予想をしてみたいと思います。
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利用者が少なかった

サービスとしては目新しいものの、実は利用者が少なかった・・というのが、このファミリーカウチが廃止となった真っ先に考えられる理由です。
もし、このファミリーカウチの廃止理由が、利用者が少なかったという理由だととしたら、何故利用者が少なかったのでしょうか。
理由その1 料金が高い

座席利用者 | 1人 | 2人 | 3人 |
追加料金 | 110,000円 | 55,000円 | 22,000円 |
チャイナエアラインでのファミリーカウチの利用料金がこちらです。
3席並びのカウチシートを1人~3人で利用する際の、追加料金の設定は、1人利用(1人で3席占有)で11万円。2人利用(2人で3席占有)で5万5千円。フルフラットになるとはいえ、3席を3人で利用するという通常利用状態でも、なんと22,000円も追加料金を取られます。
ちなみに、チャイナエアラインで設定されているカウチシートは3列シートのみで、4列シートでのカウチシートの設定はありません。(※$/円のレートは1$=110円で計算しています。)


そして、台北とアメリカを結ぶ「USAルート」を利用する場合で、かつ6席(3席×2列)の以上の利用の場合に限り割引があり、以下の追加料金になります。
座席利用者 | 1人 | 2人 | 3人 |
追加料金 | 88,000円 | 44,000円 | 17,600円 |
この割引後の料金でも、占有料金はかなり高いですよね。結局、割引を含めても、チャイナエアラインでのカウチシートの1席占有にかかる追加料金は500$~400$ということになります。
例えば、家族4人で2列のカウチシートを占有する場合、6席を4人で利用することになり、占有座席は2席ですので、1,000$の追加料金が必要という計算になります。
ファミリーカウチを利用するためには、この追加料金を支払うかどうか、ということ検討することになるわけですが・・子連れ旅行は何かとお金がかかるので、この追加料金1席5万円、2席で10万円は正直高い!と感じても仕方ないかな・・と思います。
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理由その2 ファミリーカウチの設定路線が悪かった

チャイナエアラインのファミリーカウチの設定路線が悪かったことも、中止となった一因ではないかと思います。
このファミリーカウチですが、割引対象となる米国路線の場合、台北とロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコを結ぶ路線が、ファミリーカウチが設定されている路線となります。
でも、このロス/ニューヨーク/サンフランシスコを結ぶ路線ってバリバリのビジネス路線で、家族連れが大量に搭乗しているイメージってほとんどないですよね。
その他、B777やA350が運航している路線って、ほとんどがカウチシートのマーケティング対象となるファミリーの搭乗率の低い中距離路線や、長距離路線の場合ファミリーの搭乗が必ずしも多いとは言えないヨーロッパ路線や上記の米国路線なんですよね。
この「ファミリーカウチ」の設定路線の失敗も、もちろん中止に至った一因であると思います。
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サービスが面倒&労働争議問題

もう一つの理由。それが、ファミリーカウチシートのサービスにより、客室乗務員が多忙になりすぎた・・ということ。
このカウチシート、睡眠中も原則としてシートベルトの着用が必要ですので、かなりの頻度で乗客の様子の見廻りが必要になります。また、シートのベットメイク等の手伝いも必要になるので、CAの方にとっては意外に面倒なシートのようです。
そこに追い打ちをかけたのが、チャイナエアラインの労働争議問題。
ご存知の方はご存知だと思いますが、このチャイナエアライン、2016年4月に、新たに導入された勤務制度に不満を募らせた従業員が大規模なストライキを起こしています。このストライキにより、実に2万人以上の利用者に影響が出たと言われています。(この結果、チャイナエアラインの羽田ーハワイ路線が無期限運休になったのは、チャイナエアラインでハワイに行くのを楽しみにしていた方には悲しい出来事として語り継がれています。)
まさかこのファミリーカウチサービスの導入によるオペレーションの増加がストライキの原因・・・ということはないと思います。
しかしながら、少ない人員でエコノミークラスのサービスをするうえで、特別なサービスが必要となり、実は手間のかかる一方、利用者の少ないファミリーカウチサービスを廃止することにした、ということは理由としてはあり得る理由だと思います。
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ANAのA380カウチシートの今後を予想する

このチャイナエアラインの「ファミリーカウチ」販売終了という衝撃のニュースですが、ANAが新たに設置するA380のカウチシートへの影響はあるのでしょうか?
ここまでの情報を踏まえ、今後について勝手に予想してみました。
今回のANAのカウチシートの設置はファミリー御用達のハワイ路線のみ。設置路線は完璧
まず、ANAが今回カウチシートを設定するのは、ファミリー御用達のハワイ路線のみです。
このハワイ路線は、家族連れが8割以上を占めるという、もはや伝説の子連れ路線です。A380のカウチシートには子連れ搭乗者からの相応のニーズがあるはずですので、そもそも搭乗率的に苦しむということはないでしょう。
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座席数に対して少ない人数での(貸切)利用ニーズがどれだけあるか?は未知数

一方で、ANAが提唱する、このような3席に対して親子2人が添い寝で占有するような使い方をする場合、1席占有あたり4~5万円の追加料金が必要となることが予想されます。
この占有料金が、乗客に一体どのような評価をうけるのか?高いとみるか?安いとみるか?は、正直分からないのも事実です。
ハワイは親子4人で訪問した場合、ホテル代や飲食代も含め現地での旅行代金は別途さらにかかりますので、エコノミークラスでの旅行を選択した場合、快適に眠れるのかどうかもわからないこの「カウチシート」に、片道5~10万円の追加料金を支払うニーズがあるか?については・・・こればっかりはよくわかりませんね。
カウチシートへのCAさんのサービスの煩雑さについて

これはニュージーランド航空のカウチシートサービスの使い方提案です。
ANAも、このサービスもお手本にしながら、さすがに今後搭乗客数を伸ばしていきたいA380を運航するハワイ路線ですから、CAさんの動きを含めたサービス体制はしっかり構築してくるのではないかと思います。
前述のとおり、この東京ーホノルル路線はそもそも家族連れが乗ることを前提にした路線ですからね。
少なくとも「カウチシートのサービスが客室乗務員への過度の負担になるから休止します」という運用結果になることは、無いように思います。
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カウチシートサービスの占用料金設定がポイント。利用しやすい料金設定が長期の安定的な顧客を生む
このカウチシートサービスを世界で初めて導入したのは、ニュージーランド航空です。
スカイカウチサービスと銘打って、エコノミーでもフルフラットにできるサービスを提案したんですよね。
でも、このサービスが高い評価を受けたのは、主に以下の三つの理由であるといわれています。
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今回のANAのハワイ路線A380でのカウチシート設定は、まず少なくとも①と②の条件は満たしています。
ハワイ路線は約8時間のフライトになりますので、搭乗時間が長く、フルフラットで子どもが横になれるカウチシートサービスの需要はそれなりにあるものと思います。
また、ビジネスでの搭乗者はほとんどいませんので、乗客は観光客ばかり。しかも子連れ客が8割ですので、カウチシートのニーズは十分だと思います。
③の搭乗率については、かなり高めになると予想されはしますが、約500人以上を収容するA380なら搭乗率についてもあまり気にする必要はないように思います。
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残る問題は価格次第
こうなると、残る問題は価格だと思います。あまりにもカウチシートを快適に利用するうえで必要な占用座席の価格(例:3人掛けシートを2人で使用する場合の1名分の座席の価格)が高すぎると、チャイナエアラインの二の舞になることも十分予想されます。
このチャイナエアラインの事例も踏まえ、ハワイ路線のA380を利用する子連れ旅行者が「これなら、使ってみてもよいかな」と思える価格設定ができるかどうか?
これが、ANAのカウチシートサービスの今後のカギを握るように思います。折角のカウチシートですから、ぜひ長年にわたって愛されるような・・特に価格設定にしていただきたいと思います。
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