海外旅行でなんといっても辛いのが長距離移動ですよね。そんな時、選択肢の一つとなるのが「プレミアムエコノミー」クラス。
ビジネスクラスよりお手軽な追加料金で乗ることができるので、特に中長距離便でかなりの人気のようです。
私自身、このプレミアムエコノミークラスについてかなり事前調査もしましたし、実際に搭乗もしましたが・・結局「プレエコは支払う追加金額に見合わない」「大損だからやめといた方がよい」という結論にたどり着きました。
今後のプレミアムエコノミーのサービス改善に期待しつつ、現時点ではプレミアムエコノミークラスをおすすめできない3つの理由を解説します。
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目次
プレミアムエコノミークラスは、航空会社にとって最も利益率の高いクラス
プレミアムエコノミーの実態のご紹介に入る前に、まず確認しておきたい事実。それが、このプレミアム・エコノミークラスは、実は航空会社にとって最も利益率が高いクラスである、という事実です。
ではなぜ、航空会社にとってのプレエコの利益率が高いのか?
それはなんといってもその価格設定の割に、航空機内の面積の占有率が少ないということです。
例えば、ANAのB777-300ER機(264席仕様)の場合の、機体内の各クラスの座席配分がこちらです。
全座席数264席の約2割の60席しかないファースト・ビジネスクラスが、機体の約半分の面積を占有しています。
一方、プレエコは、エコノミーと遜色のない面積で設置することができています。エコノミークラスに比べ、プレミアムエコノミークラスは面積比たったの50%増(1.5倍)で設置できるそうです。
一方、ビジネスクラスの場合エコノミークラスの3倍の面積を利用します。確かに、上記のB777でも、エコノミーの172席とビジネス52席の面積が大体同じくらいなのが分かりますね。
エコノミーに比べ面積を占有しない割に、高い料金を取れる。しかも、エコノミーに比べて食事などのコストもそんなに大量にかかるわけではない。
このため、プレミアムエコノミークラスは航空会社にとって最も利益率の高いクラスなんです。言葉はよくありませんが、ありていに言えば「カモ」にされているってことです。まずはこの事実を確認しておきたいと思います。
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プレミアムエコノミークラスのメリットについて
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一般的に挙げられるプレミアムエコノミーのメリットは、上記の通りです。
ここからは、プレミアムエコノミークラスは航空会社にとって利益率が最も高いクラスである、という前提を踏まえ、本当に追加費用を支払ってでも乗る価値があるのか?について、これらのメリットを順に確認していきたいと思います。
①エコノミーより広いシート:広いといっても新幹線以下
まず、プレミアムエコノミークラスに最も期待したいポイントであり、そして実は全くもって残念なのがこの「シートの快適性」です。
もちろん、エコノミーよりは広く、余裕があるのは間違いありませんが、お金を払う価値がある広さがあるのかというと、正直、疑問であるというのが本音ですね。
航空会社 | エコノミー | プレエコ |
ANA | 約79~86cm | 約97cm |
JAL | 約84~86cm | 約107cm |
シンガポール航空 | 約81cm | 約97cm |
ブリティッシュ・エアウェイズ | 約79cm | 約97cm |
ルフトハンザ ドイツ航空 | 約80cm | 約97cm |
アメリカン航空 | 約79cm | 約97cm |
各社のエコノミークラスとプレエコクラスのシートピッチの違いがこちらです。
エコノミーの標準が約80cmであるのに比べ、プレエコは約97cmですので、約1.2倍シートピッチが拡大されています。また、横幅は大体49cmくらい。エコノミーの平均値45cmに比べれば、4~5cmくらい横幅も拡大されています。
そして、リクライニング角度は115度程度・・というのが、プレミアムエコノミークラスのシートの大体の相場観です。
プレエコ(平均値) | 新幹線 | |
ピッチ(縦幅) | 97cm | 104cm |
横幅 | 49cm | 45cm |
リクライニング角度 | 20~25度 | 20度程度 |
このプレエコシート、エコノミーと比べてしまうと確かに広そうに感じるのですが・・例えば東海道新幹線のシートと比べた結果がこちらです。
シートピッチは新幹線が104cmなので、JALを除き新幹線に完敗ですし、リクライニング角度も新幹線とほぼ変わりません。新幹線は最大2~3時間程度の移動手段ですが、プレエコの場合、出発時間帯によっては睡眠時間を含む長距離移動であることを忘れてはいけません。
大事なことなのでもう一度言いますね。プレミアムエコノミークラスのシートは広いとは言え新幹線と同等です。また、リクライニング角度も新幹線とほとんど差異はありません。
新幹線と同レベル。シートが広いといっても、そんなレベルということです。
「新幹線・・快適だね!あれなら爆睡できるよ!」という方はもしかするとエコノミーでも爆睡できる方ではないでしょうか。もちろん、レッグレストや肘掛などの装備がある分、新幹線よりちょっとだけ快適性は高いのですが、広さについては「新幹線と同等」ということです。
もちろん、窓側の場合、新幹線と同等のシートピッチしかないので、通路に出るのもかなり気を使うことになります。決して快眠が約束されたシート・・というわけではないんです。圧倒的な広さを期待してはいけません。
ビジネスクラスなら、フルフラットシートがメインの時代に
ちなみに、ビジネスクラスのシートは180度フルフラットがほぼ標準装備の時代になってきました。一部の短距離路線にはライフラット以下のシートも若干残ってはいますが、180度シートへの移行が進んでいます。
プレエコシートは、新幹線と同等レベル。ビジネスクラスは、フルフラットシートがデフォルトですからね。プレミアムエコノミークラスは、やはり「エコノミークラス」に過ぎないと言わざるを得ないです。
②より上質な食事&ドリンク:メインの食事はほとんどの航空会社でエコノミーと共通
そして、次のプレミアムエコノミークラスの残念な点。
それが、ほとんどの航空会社でメインのお食事がほぼエコノミーと共通なことです。もちろん、最近のエコノミークラスの食事はどこの航空会社でも美味しいので特段の不満はありませんが、ビジネスクラスのようなプレミアム感は、残念ながら非常に希薄です。
航空会社 | メインのエコノミーとの違い | 特 徴 |
ANA | なし | ビジネスと同じ飲み物・デザート+特別な軽食 |
JAL | なし | 特別な飲み物+デザート+軽食 |
シンガポール航空 | あり | ブック・ザ・クック |
ブリティッシュ・エアウェイズ | あり | ビジネスクラスの食事+陶器の器 |
ルフトハンザ ドイツ航空 | あり | 特別な食事+陶器の器 |
アメリカン航空 | あり | 特別な食事+陶器の器 |
各社のプレミアムエコノミーの食事・ドリンクの特徴をまとめたものがこちらです。
日系の航空会社はメインのお食事はエコノミーと全く同じ。ただし、飲み物・軽食・デザートがビジネスクラスと共通に設定されているなど、特別なサービスになっています。
一方、海外の航空会社の場合は、メイン料理にプレミアムエコノミー専用の食事が用意されている場合が多いです。ただ、中身はほぼ同じで、器だけエコノミーとは違う、高級感ある陶器の器に盛りつけて提供する、というサービスがほとんど。単に器を移し替えただけで、内容はほぼエコノミークラスと同等です。
唯一、シンガポール航空のブック・ザ・クックだけは数種類のメニューから事前に料理を選ぶことができる本格派ですが、あくまでも「なんちゃってブック・ザ・クック」であって、質としてはエコノミークラスに+α程度、というのが実態です。
つまり、航空会社からすると、一部のドリンクや軽食など、エコノミーに毛の生えた程度のサービスを提供するだけで済む、ということです。人件費は同額かかると考えれば、エコノミーとの差額は数百円のレベルではないでしょうか。
ビジネスクラスなら、フルコースに高級シャンパンが提供される
ちなみに、ビジネスクラス食事&ドリンクは、エコノミークラスとは比べてはいけないレベルです。
食事&ドリンクの質ともに、エコノミークラスとは段違いのサービスを受けることができます。このサービス差を踏まえると、はっきり言ってプレエコはエコノミークラスをベースとした、「極端に追加出費を抑えたサービス」であることがよくわかります。
ビジネスクラスと同じデザートを提供します!って言っても、デザートは多分余った分は廃棄処分でしょうから、まずはビジネスクラスの余り分を提供+プレエコ用に少し多めに搭載しておけばよいだけでしょう。また、軽食についてもカップラーメン程度ですので、人件費込みでも数百円です。
プレミアム感を出しつつ、実際はほぼエコノミー同等のサービスですから、なんか特別な食事みたいな雰囲気で騙されてはダメだと思いますね。
③ラウンジなど地上サービス:ビジネスクラスと共通サービスであり、航空会社の負担は軽微
最後のサービスの違い。それが、優先チェックインやラウンジサービスなど、地上サービスの違いです。
優先チェックインサービス
航空会社 | 優先チェックインサービス |
ANA | 〇 |
JAL | 〇 |
シンガポール航空 | 〇 |
ブリティッシュ・エアウェイズ | ✖ |
ルフトハンザ ドイツ航空 | ✖ |
アメリカン航空 | 〇 |
まずは到着時の優先チェックインサービスの実施状況がこちら。
欧州系の航空会社の一部を除き、ほぼ優先チェックインサービスを実施しています。
空港ラウンジサービス
航空会社 | 航空会社ラウンジ |
ANA | 〇(一部を除く) |
JAL | 〇 |
シンガポール航空 | ✖ |
ブリティッシュ・エアウェイズ | ✖ |
ルフトハンザ ドイツ航空 | △(有料) |
アメリカン航空 | ✖ |
実はちょっとだけあると嬉しい空港ラウンジサービスの実施状況がこちらです。
日系の航空会社にはラウンジサービスがありますが、日系の航空会社以外の場合ラウンジサービス自体がないか、ルフトハンザのようにラウンジサービスが有料です。
地上サービスには、ほぼ追加費用は皆無
地上サービスは、ラウンジサービスを除き、エコノミー、ビジネス問わず必ず必要なサービスです。そして、クラス分けしても、優先するだけのことでサービスを提供する人数は変わりません。
このため、この優遇サービスは航空会社にとっては痛くもかゆくもないサービスなんですよ。
ラウンジサービスについても、国内のハブ空港などで、どうせ自社の上級顧客やビジネスクラス以上の乗客向けにラウンジサービスを提供しているのだったら、プレエコの乗客の一部を入場させても、特に痛くも痒くもない、というのが本音だと思います。
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プレミアムエコノミークラスへの搭乗に必要な追加費用
さて、ここまでプレミアムエコノミークラスがどれくらい「微妙」なクラスであるかについてご紹介してきました。
シートの広さは、広いといっても新幹線並み、食事&ドリンクはエコノミーに毛が生えた程度で手抜き状態、追加費用がほとんど必要のない地上サービスで、エコノミーとの若干の差別化を図っている・・というのがプレエコサービスの実態である、ということは、何となくお分かりいただけたのではないかと思います。
では、このプレミアムエコノミークラスの航空券と、エコノミークラスの航空券との価格差はどれくらいあるのでしょうか。
例えば、上記はANAのホームページで紹介されていたロサンゼルス行きエコノミー、サンフランシスコ行きプレミアムエコノミークラスの広告です。どちらも同じ北米行き路線と考えると、ほとんど同等の路線として比較してよいでしょう。
この2路線で比較した結果、価格が最も安い時期で、エコノミーとプレエコの価格差は約2倍強ということになります。
このとおり、大体エコノミークラスとの価格差は2~4倍くらい、というのがプレミアムエコノミークラスの標準的な価格設定です。
一方、JTBなどのパッケージ旅行の場合、プレエコの追加代金は北米・ヨーロッパの場合で1人あたり片道5~7万円くらいのお値段、というのが標準的なお値段になると思います。パッケージツアーの北米・ヨーロッパのチケット代金はやはり7~8万円くらいと予想されますので、約2倍程度のお値段になります。
上記のとおり、往復だと1人あたり12万円とかの追加のお値段、2名の場合20万円超の追加料金ですからね。ここまでの解説を読んで、この追加料金をどう思いますか?
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プレミアムエコノミーをおすすめしない理由
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ここまでご紹介したポイントを踏まえた、プレミアムエコノミーをおすすめしない3つの理由が上記の通りです。
ビジネスクラスの快適性と単純比較すると、圧倒的にエコノミークラス寄りなサービスの割に、価格はエコノミーの2倍なんです。確かに地上サービスは充実している会社が多いですが、それに騙されてはいけません。海外旅行の快適性の8割は、狭い機内での自由度で決まりますからね。
何故、プレミアムエコノミークラスが利益率が高いのか、何となくお分かりいただけたのではないかと思います。
特に残念なのはシート
特に個人的に厳しかったのがシートですね。私はやっぱりどうしても頭を水平近くまで下げないと眠れない性質のようで・・プレエコはシートは確かにエコノミーよりも広いんですが、リクライニングは125度程度が限界なんです。
このため、プレミアムエコノミークラスでも、搭乗中に一切眠れないことには変わりありませんでした。
少しくらいシートが広くても、リクライニング角度が無さすぎるので眠れないんです。眠れないとシートが広くても全く意味がありません。
一方、私の妻は小柄なほうなので、印象を聞くと「別にエコノミーでもプレエコでも広さ的には大差ない。」「プレエコに乗るくらいなら、何回かエコノミーで我慢してでもビジネスが良い」とのお言葉。
確かに、小柄な日本人女性の場合、エコノミークラスでも十分な広さがあります。特に、JALのエコノミークラスは強烈に広いですからね。プレエコに乗るくらいなら、JALのエコノミークラスの方がよっぽどましだと思います。
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これからのプレミアムエコノミークラスへの期待
これからのプレミアムエコノミークラスへの期待。
それは、とにかくシートへのこだわりですね。
もう、地上サービスも、機内での食事&ドリンクもエコノミーと全く同等でもいい。いや、むしろエコノミー以下でもいいので、とにかくフラットに近いシートがぜひ欲しい!!と切実に思います。
上記のようなライフラットでも全然OKです。170度くらいになれば十分眠れます。
もちろん、前の席の足元にグリグリ足を突っ込む形でもよいです。横幅も狭くてもいいので、何とか機内で横になって眠れるシートを、現在のプレミアムエコノミークラスくらいの価格で売り出してくれたら、私は継続してプレエコを買うと思いますよ。
LCCでもフルフラットの座席を売り出す時代ですからね。進化したプレミアムエコノミーシートを期待したいところです。
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まとめ プレエコの存在意義とは
正直、現在のプレミアムエコノミークラスに搭乗するのは大損だと思います。
もちろん、アップグレードとかの理由でタダで乗せてくれるなら喜んで乗りますが、お金を払って乗ることは、今後はないですね。
シートは広いといっても新幹線並み、食事&ドリンクはエコノミーに毛が生えた程度、別になくても良い地上サービス・・このプレエコに約2倍の運賃を支払うことは、おススメはできません。
個人的に、飛行機の上級クラスに求めるのはやはり「快適性」であり、その快適性の根本にあるのは「快眠」だと思います。
余計なサービスは良いので、「快眠」できるプレミアムエコノミーの誕生を強く期待したいと思います。
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